大学で社会保障についての講義を受け、テスト勉強して、共産主義運動とのかかわりの部分がおもしろいなぁと思ったのでまとめる。

 十九世紀の後半、ドイツは産業化とともに社会主義思想を持つ労働者の台頭が始まりつつあった。宰相ビスマルク社会主義運動をドイツ帝国にとっての脅威とみなし、アメとムチの政策で対処しようとした。一方で社会主義運動を厳しく弾圧するとともに、他方ではいまだ社会主義に染まっていない労働者に福祉の政策を与えることによって彼らをドイツ帝国の支持者に転じさせようとした。

 この後者の政策が社会保障の創設である。「疾病保険法」「災害保険法」「老齢・廃疾保険法」からなるビスマルク社会保険三部作を制定していった。

 二十世紀に入る前後から、労働者階級は社会保険の有益性を認識し、その拡大の要求と運営への参加を果たす。こうして社会保険ドイツ国内で拡大すると共にヨーロッパ諸国にも導入された。

 ビスマルク社会保険は、基本的には社会構造を維持すると言う目的のもとに実施されながら、結果においては社会構造の変革に大きく寄与した。つまり、資本主義の大枠は維持しながら、その内部で労働者の福祉向上に威力を発揮するのであった。

これをまとめていて、先日のテレビ番組での宮崎哲弥の言葉を思い出す。確か、「社会主義は資本主義が成立していく過程で一定の役割を果たした。資本主義の元首たちは自分の国が社会主義になってはかなわんと思い資本主義の一部を修正した。」みたいな内容だったはず。なるほど、この考え方は上のビスマルクによる社会保険の成立の過程と一致する。

結局、社会保障がしっかりしていれば、労働者は過激な社会主義運動には走りにくいと思われる。今日、少子高齢化が進んでいることや制度上の不備から、将来的には満足な社会保険を得られない恐れのある状況と、「蟹工船」が売れていることや、共産党への入党者が増えていることとは大いに関係があるのではなかろうか。

ちなみに、別の授業で、ある先生は、年度ごとに保険料を徴収し、保険料を分割して分配すればよいというアイデアを提案してたっけな。